非常に端的に言って、性能を持つためにユーザが何か操作する必要はない。まったくない。ほっておけば自動的に行われる。
しかし、OS X のリリース以来、メモリの最適化とかメモリ解放などの操作や、それを行うアプリケーションが取りざたされてきた。定量的な性能評価もなくただ印象で「速くなった」って感想と共に、ね。
古典的なソフトのよくある挙動は、ただひたすらメモリを要求し、実際にアクセスして確保するというものだ。Mach はメモリの要求(vm_allocate)を行っても実際の物理メモリを確保しない。アクセスされるときにはじめて確保動作が行われる。なぜって?プログラマは往々にして多めに多めにメモリを要求するものだ。要求道理に渡しても使われないことは多々ある。だったら、使われる段に割り当てた方が遙かに効率的な訳だ。
メモリを要求し、ひたすら物理メモリを確保する、その後、終了すると大量のメモリが一気に空く。対価としてそのアプリを実行が終わるまでの待ち時間と、全てディスク上に追い出され読み込み直しになるバックグラウンドアプリの時間を引き替えに。そんな気休めアプリが有償であったりもしたのだ。
そして、今度は「システム標準のメモリ解放コマンドがある」という噴飯物の記事を見かけた訳だ。
https://book.mynavi.jp/macfan/detail_summary/id=37786 より |
...この人、とりあえず man を見てないことだけは理解した。
以下が、purge の man の結果だ。
man purge |
見ての通り、「ディスクキャッシュの解放」をするだけで、malloc や vm_allocate で確保されたアプリケーションのメモリには何ら影響がないことが明言されている。
てか、先の記事の解放内容も見ると分かる。この記事の書き手は、使用済みメモリが 14.90GB から 13.12GB に減ったことをわざわざ赤枠で示しているが、その横のアプリケーションメモリを見ると 10.92GB から 11.03GB に「増えて」いる。その代わりファイルキャッシュが 2.21GB から 268.9MB に減ってる。
2GB弱のディスクキャッシュを吹っ飛ばして、その分の空きが増えたことを喜んでるのだ。
先のページの結果を上下に並べて表示 purge コマンドの内容通りの結果になってるのが分かる。 |
そして、横にあるアプリケーションメモリとかファイルキャッシュの変動に気がついてもいない、訳だ。なお、アプリケーションメモリが増えればディスクキャッシュは自然と解放される、つまり必要のないことだ。
これでどのような効果があるか? せいぜい、再び同じIOがあったときにディスクを読み直すのでIO性能が劣化する、ぐらいだろうね。
Mac 系の記事には、このような無知と願望にもとづいたものが非常に多い。
ライターの頭は治しようがないので、せめて読み手がよく気をつけることだ。